うちの奥さんが仕事仲間と街に食事に行きました。
夕食です。
遠い場所なので遅くなるとのこと。
「先に寝ていて」ということで、久しぶりに家には僕と子供の2人だけ。
一緒にシャワーをあびて、食事をして、勉強させて、消灯。
来週には2学期が始まりますよ。
だから生活もリズムをだんだんと普段のリズムに戻していかないと。
一緒に布団の上に寝ながら、なんとか寝かしつけようと思い、「こわい話」をすることにしました。
うちの子が小さいときに「早く寝ないと怖い話をするよ」と言って寝かしたものです。
話といってもその場で即席で作ったお話。
怖い話のはずだったのですが、終わってみれば子供は「おもしろかった」だって。
でも話をきいて落ち着いたのか、そのあとすぐに寝てくれました。
どんな話かというとこんな内容です。
、、、、
あるところに小学3年生の男の子がいました。
ある日男の子が学校の職員室の前を通ったときのことです。
棚の上に「忘れ物箱」という箱をみつけました。
そしてその箱の中には一本の茶色くて長い鉛筆がありました。
一度も使われたことのない鉛筆でした。
男の子は「一体誰が忘れたのだろう」と思いましたが、すぐにその場を通り過ぎました。
しばらくして、男の子はまた職員室の前を通りました。
そして忘れ物箱の中にまだあの鉛筆があることに気がつきました。
いつまでも箱の中にある一本の茶色い鉛筆。
「あの鉛筆は一体いつからあそこにあるのだろう?」、男の子は気になりました。
男の子には中学3年生のお姉さんがいました。
「お姉ちゃんにきいてみよう」、そう思いついて家へと帰りました。
お姉さんは高校受験のための勉強に毎日塾に通っています。
男の子が家に帰ったときにはまだお姉さんは家にいませんでした。
外が暗くなりお姉さんが帰ってきました。
でもすぐには話ができません。なぜなら帰ってきたばかりのお姉さんはいつも忙しそうだからです。
「あー疲れた」、2階の部屋から降りてきたお姉さんが言いました。
男の子はお姉さんに聞いてみました。
「おねえちゃん、小学校のことを覚えている?」
「え?どんなこと?」、お姉さんが聞き返しました。
そこで男の子はあの鉛筆のことを話しました。
「そういえば、あったわ!茶色い鉛筆。」
「じゃあ、ずいぶん前からあるんだね、あの鉛筆。一体いつからあるのかなあ」
男の子とお姉さんは考えました。
しばらくしてお姉さんが何かを思いつき言いました。
「そうだ!お母さんも私たちと同じ小学校を卒業したんだって、この間言っていた。お母さんに聞いてみようか?」
「え、でもそれってずいぶん昔のことでしょ?」、男の子は少し驚いてお姉さんに言いました。
お姉さんと男の子は台所へと行きました。
トントントン、、、。
お母さんは野菜を切っていました。夕食の準備をしているのです。
お姉さんがお母さんに聞きました。
「ねえねえ、お母さん。小学校に行っていたときのこと覚えている?」
「小学校?そうねえ、あんまり覚えていないわ。どうしたの?」、お母さんは包丁でにんじんを切りながら答えました。
「あのさ、忘れ物箱に鉛筆があるんだよ。おねえちゃんが小学校にいた時から」男の子が言いました。
「忘れ物箱に鉛筆ねぇ、ずいぶん長いこと置いてあるのね」とお母さん。
「お母さんが小学生だった時にもあの鉛筆はあった?」と男の子が聞きました。
「そんなの覚えているわけないじゃない、鉛筆の忘れ物なんて」、お母さんは少し笑いながら答えました。
「茶色くてさ、一度も使ったことのない鉛筆なんだ。」と男の子が言いました。
「茶色、、、。使ったことがない鉛筆、、、」。
お母さんはにんじんを切るのを止めて、どこか遠くを見るような目をしました。
その顔を男の子とお姉さんは2人でみつめました。
少ししてお母さんは突然「あっ!」と少し大きな声を出しました。
そして2人のほうを見て言いました。
「思い出した!あったわ、茶色い鉛筆でしょ!忘れ物箱の中に1本。」
男の子とお姉さんは驚いた顔をしました。
なぜなら、あの鉛筆はお母さんが子供の頃から小学校にあったのですから。
、、、、、、話が長くなったので、ここまでにします。もちろん続きはありますけどね。